彼はまるで雪のよう。空を独占する太陽を恐れるくせにその光に焦がれていて。ふらふらと、この宙を舞っている。

指先を掠めただけで低温火傷を食らわせてしまいほそう。嫌に荒々しいくせにやがて溶けて消えてしまうような、儚くて脆い、そんな自然の賜物。


「俺、溶けちゃいそう」

「……うん?」

「君の手、暖かいから」


不意に何気なく発せられたその言葉に、私の考えていたことが見透かされてしまったのかと思った。もしそうならば、……やっぱり君は消えてしまうのだろうか。私を置いて、また春に攫われてみせるのだろうか。


君がやけに切なそうに微笑んでみせるから、どうしようもなく慌ててしまって。


──消えてしまわないように。


その鈍い熱を篭った冷たさを手放そうと、思わず強く、自分の方に手を引いた。


「え、」


けれど、真っ白な腕はそのまま私の元へとついてきて。掌越しに彼が、少しだけ力を込めたのが伝わってくる。


冬の温度のような冷たさが、私にまとわりついて離れない。触れられたその内側が、また妙に熱を帯びていく。


じんじんと、そこの箇所が雪に触れたかのように疼いて、そして鼓動がいくつか速まった気がした。


「このままでいいよ」

「……溶けちゃうよ」

「溶けちゃっても、いいかも」


冗談交じりに笑って見せて、そのあとにもう少しだけ強く、私の手を握り直した──君に。


「来年会えなかったら、やだよ」

「ここに来てよ、会えるから」

「……全部、溶けちゃっても?」

「会えるさ。また冬が来るからね」