白が溶ける。




君に触れられて、その熱に絆されて。

数滴ずつ。けれど確かに、じわりと手の内の白色が溶けて、地に積もった白色の上に重なり薄い灰色を造っていた。


それに伴い、その掌は赤くなっていく。ヒリヒリと痛みを感じているはずなのに。平気そうな顔をして。


彼は地面の白色を握っては、時間をかけて液体へとと変えていく。


「なにしてるの」


その行為が目の前で繰り返されて四回目。尽きた会話と終わらない沈黙に耐えかねて、その彼の手を握った。


二人の熱に反応して、僅かに残っていた雪が液体へと変化し白い指先を伝って地面に流れ落ちる。


ヒヤリ。私の掌から一度に熱を吸い取ったその手が残すのは、思わず手を離してしまいたくなるほどの冷たさとピリピリと走る鈍い痛み、


それともう一つ。


疼いてしまうほどに、どうしようもなく身体が火照る。…この熱は手元の辺りまで巡回することはないみたいだけど。


「冬はあんまり日が登らないから」


まるで質問の回答なってない適当な言葉で答えてみせて、雪に触れることのなくなった──私と繋がれたままの自分の手をぼうっと見つめる彼。

その瞳に捕えられた自分の身体の一部に、少しだけにやけてしまうのはご愛嬌。


先程まで彼に遊ばれていた雪と同じ色をした肌。同系色の髪の毛と唇。体の内側から熱が滲んでいるのでは無いかと疑ってしまうくらいに熟した赤色の瞳。