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時計も23時を回った頃ーー
私たちの部屋もそろそろ寝よう、
という話になっていた。
「円、篠原さん。
男子部屋には明日行こうね!」
「えっ、男子部屋行くの禁止だよ?」
「いいのいいの!
それが楽しいんじゃん!
ね、円。宮くんの部屋行こうね!」
「いや、いい。」
「何でだよー!」
結が私の腕を掴んで揺する。
「バレたら面倒だし。」
「ケチだなぁ。」
「ね、ねぇ。円ちゃん。」
篠原さんが布団に潜った状態で私を呼んだ。
「ん?」
「円ちゃんって宮くんのこと嫌いなの?」
「え…き、嫌いではないよ。」
「でも好きな訳じゃないでしょ?」
「…
うん。」
なんとなく、結の方は見られなかった。
「今日も見ててすごく仲が良いなぁ、って思ったから。
付き合ってるのかとも思ったけど。」
「付き合ってないよ。」
「私はお似合いだと思うよ。」
篠原さんに悪意はないようだった。
「ありがと…。」
「そうかな?嫌いじゃないって本当?」
その時、会話に参加してきたのは同室の別グループの女の子だった。
「え、うん。」
「だって、グループ決めの時も
めっちゃ喧嘩売ってる感じだったじゃん。」
向こうのグループの女子は相槌を打って同意している。
「あのときは宮の態度がムカついて…」
「宮くんの態度?
あの王子様のどこにムカつく要素があるの?」
「それは…」
あのとき宮が私に耳打ちしたことを言えば、
宮との契約的にアウトだ。
「ちょっと反抗的な態度とって、宮くんの気を引こうとしてるんじゃない?
じゃなかったら相当嫌いか、だよ。」
「嫌いじゃない…。」
「じゃあ好きなの?」
『俺のこと、絶対好きになるな。』
「……。
好きじゃないよ。」
その子は私を睨み付けた。
私は無表情のまま見つめ返す。
部屋の中はピリッとした空気に包まれていた。