不眠姫と腹黒王子




「よし、終わり!
明日は自分でやりなよ?」

「うん…。」


鏡の中の自分を見て、少し驚いた。

顔色は相変わらず悪いけれど、
髪はお母さんが死ぬ前の自分と同じ。

黒髪の少し長めのボブで、
サラサラしているとよく結に褒められていた。

昔に戻ったみたい…。


「円、何してるの?戻るよ。」

「え、うん。」


慌てて結と篠原さんのあとを追い、
脱衣所を出ると、誰かの肩にぶつかってしまった。

「あ、すみませ…」

「円じゃん。何?風呂上が…」

顔を上げると、案の定宮だった。

でも、私の顔を見て固まっている。

「宮??」

「……。」

「今からお風呂?」

「えっ…」

「??」


宮は我に返った様子で後ずさりすると、
「…じゃ。」
と、きびすを返して男湯に入ってしまった。


「春だねぇ。」

結がボソッと呟く。

「は?秋だよ。」

「円はまだまだ冬だねぇ。」

「だから、秋…」

「いいから。行くよ!」


みんなして何なんだ…。

私は頭の上にはてなを浮かべつつ、
反論することを諦めた。