不眠姫と腹黒王子




「あ、宮見て。海鮮丼。」

「え、どこ?」

私が指を差していると、
宮がグッと顔を近づけてきた。

「っ!」

「どこだよ。」

「え、あ、あそこ…」

なんだ、指の指す方向見るためか…。

いや、でも距離近いよ。
焦る。


「海鮮好きなの?」

「っは!?好きじゃないし。」

「え…。」


あ、間違えた。

宮が意味わからないという顔をしている。


なんか、宮に最初に言われた
『俺のこと、絶対好きになるな。』
が、じわじわ効いてくるな。

好きになっちゃいけないっていう刷り込みが激しい。


「好きじゃないならなんだよ。」

「あ…泳いでる魚が好きだから?」

「ブッ…
相変わらず変なやつだな。」


笑った…。


宮が笑うと嬉しい。
もっと笑ってほしい。

できれば、からかってるんじゃなくて、
本音で宮にも友達って思ってほしい。

そしたらもっと笑ってくれるんじゃないか、
って…


「時計台着いたぞ~」

平塚くんが後ろに呼び掛け、
私は我に返った。


目の前には、人だかりができている建物。

もう着いたのか…。

宮はすぐに爽やかモードに戻ると、
平塚くんたちの方に行ってしまった。


宮は、私のことどう思ってる?

本音が知りたいよ。


聞きたいけど、なんか怖くて聞けなかった。