「え、こっち見てない?」
結がいきなり焦り始める。
「見てるね。」
「えっ、まさか…!」
その『まさか』。
宮は女の子の壁を振り切って、
私たちの方に近づいてきた。
「なっ、え…!」
「嘘。あの宮くんが…?」
結と篠原さんはあたふたしている。
さすがの私もちょっと心臓がざわつく。
いや、女子たちに注目されてるからだろうけどね。
「円。」
「何。」
平静を装って、顔色ひとつ変えない私を見て宮はフッと笑った。
「もう一人篠原さん?」
にっこりと尋ねると、
篠原さんはうんうんと何度も頷いた。
「そっか!円たちと組むのも楽しそう。
な?徹。」
後ろに立っていた平塚くんは
「そうだねぇ」
と笑顔で肯定する。
女子の「やだ~」という悲鳴が耳に入った。
宮は私の耳元に顔を寄せ、呟いた。
「一緒の班になってやるよ。
そのくま、どうせ眠れてないんだろ?
俺が必要なんじゃない?」
「……。」
宮は私から距離をとり、
また爽やかスマイルを浮かべた。
なんで…こんなにイライラするんだろう。
上から目線なのはいつもだし、
猫かぶりもちゃんと理由があるってわかったのに。
女子に囲まれて平然として、
それを振り払って私のところに来る宮が…
なんかやだ。
「宮は私たちと組みたいの?」
私の予想外の返答に、
宮は一瞬不快そうな顔を見せた。