「せっかくの花火…
宮と…」

「いいよ。寝ろよ。」


俺が円の頭を掴んで肩に押し付けると、
円は何かモゴモゴ言ってすぐに静かになった。


その直後、でかい音を立てて空に花火が打ち上がった。


肩の円は相変わらず規則正しく寝息を立てている。

こんなにでかい音の中も寝てるなんて珍しいな。

いつもより距離が近いからか?


きれいな花火が何十個も打ち上がる。

雑踏の中、それを一人で見上げるのは初めてだった。


「静かに見てんのも悪くないな。」


円の前髪をかき分け、その表情を覗く。

安心したようにスヤスヤと眠り続けていた。


今のうちにいっぱい寝とけ。

夏休みは長いんだから。


見上げた夜空に咲く花火は俺たちの前でだけ、
静かに、穏やかに散っていくようだった。