「あんたが気づかれないようにしてるからでしょ。」

「……。」

「何も伝えようとしてないくせに、
伝わるわけないじゃん。」

「だからお前は特別なんだ。」

「…そんなお世辞要らない。
他人に何かを求める前に、
まず自分で犠牲を払いなよ。」

「そうしたいと思える相手がいたらな。」

「はぁ…なんでそう頑固なの…?」

「いいんだよ。何も間違ってない。
俺の正しいと思う生き方だ。
価値ある人間になら犠牲を払う覚悟はあるよ。」


そう言うと、宮は私の頭をポンポンとなでた。

私がふてくされてそっぽを向くと、
布団をかけ直して呟いた。


「昨日はちょっとからかった。
悪かったな。」

「……」


宮は立ち上がり、ベッドの周りのカーテンを引いた。


「…ごめん。」

寝返りをうって宮の方を見ると、
宮は少しだけ笑った。

そしてカーテンを閉め切り、
静かに保健室を出ていった。


"俺の正しいと思う生き方"か。

宮から初めて本音聞いたかも。


私は彼の残り香を感じると、
浅い浅い眠りにつくことができた。