不眠姫と腹黒王子




「円っ!?」


10分後、登校途中だった結が慌ててトイレまで駆けつけてくれた。


どのトイレかまで言う余裕はなかったので、
朝や放課後は使われない3階までずいぶん探してくれたに違いない。


「ど、どうしたの?」

「ごめん…。」

「とりあえず保健室いこう。」

「うん…。」


結に肩を持たれ、引きずられるように保健室へ向かった。

幸い、人とすれ違うことはほとんどなかったように思う。


「やだ、どうしたの?
ひどい顔色…」


保健の先生は私の顔を見ると、
一大事とでも言わんばかりの表情になった。

まずい…。
もし不眠症ってばれたら、
お父さんに連絡される。


「先生!それが、円…」
「生理痛がひどくて!!」


私がそう言うと、結は怪訝な顔で私を見た。

先生は「それはつらいわね」と
ベッドを開けてくれた。


「円…。」

「お父さんに内緒だから…
ごめん、
休ませて…」


そこからの記憶はない。

眠ったのか、気絶したのかもわからない。

目が覚めたら放課後で、
結がそばに座ってくれていた。