夏休みも間近になってきた7月中旬ーー
私は相変わらず夜、基本的に眠れない。
でも少しずつだけど、
明け方浅い眠りにつける時間も増え、
体調はずいぶん良くなっていた。
これも宮の協力のおかげ…
まぁ、脅してるだけだけど。
朝起きて、準備を始め、
父との短い会話の時間。
「円、そろそろテストだろ?
大丈夫そうか?」
「うん。毎日夜までやってるから。」
私のくまを見て、父は覇気のない笑顔を浮かべた。
「無理しすぎるところは母さんそっくりだな。」
「そんなに無理してないよ。」
「勉強も大事だけど、
健康第一だからな。」
じゃあお父さんが休んでよ。
「ありがとう。気を付けるね。」
「ごちそうさま。
今日も夜遅くなるな。」
「うん。ご飯は食卓に置いとくね。」
「ありがとう。行ってきます。」
お父さんは疲れきった顔で家を出ていった。
私は食器を片付け、
家を出る準備を整える。
お父さんに不眠のことは言っていない。
仕事でもお母さんのことでも疲れきって、
毎日今にも泣きそうなのに、
私がこんなに悩んでるなんて知ったら
きっともっと苦しませてしまう。
だから言わない。言えない。
今日も…夜一人か。
今から学校に行っても小一時間一人…。
「よし!」
悲劇のヒロインぶっても仕方ない!
学校行って、勉強でもしよっと!!
私は無理矢理口角を釣り上げ、
お母さんの写真に
「いってきます」
とあいさつをした。