「お前、そればっかだな…。」

「男なら当然だ。
高山さん、夏祭りで浴衣着てくるかなぁ…。」

「さぁな。」

「てかさ、名前円ちゃんって言うんだろ?
俺も呼んでいい?」

「……
別にいいんじゃん?」

「お、サンキュー!」

「まさか、お前円のこと好きなの?」

「いや、好きとかじゃないけど
可愛いし仲良くなりたいじゃん。」


こいつ、前から女に対してはチャラいやつだと思ってたけど、
まさか円を気に入るとは…。

まぁ別に関係ないけど。


「てかさ、円ちゃん、
お前の匂いで眠れるんだろ?」

「らしいけど…っおい、やめろ!」


徹は俺の服を掴んで匂いを嗅いできた。

慌ててそれを振りほどく。


「気持ちわりぃな!」

「ん~、匂いとかあんまわかんないけど…
俺は?いい匂いする?」


嗅げ、とでも言わんばかりに
徹は制服の裾を持ち上げた。


「誰が嗅ぐか。
どーせ汗くせぇだろ。」

「は?俺は我慢して嗅いだのに、ずりぃだろ!」

「知らねぇよ、バカ!死ね!」


徹は「ちぇ」と言って、窓の外に視線を移した。


こいつ…まじか。

じゃあ円と徹をくっつけたら、
俺って解放されるんじゃ…


そう。
俺はいつだって冷静に
この契約から早く解放される術を探している…

けど…


「……。」


まぁ、協力してやる義理なんてないか。


俺も徹と同じように、
高速で移っていく窓の外を眺めた。