不眠姫と腹黒王子




下駄箱で靴を履き替えているとき、
偶然部活終わりの徹と会った。


「今帰りかよ。」

「今日は部活早く終わらせてもらえて。」

「ふーん。」

「お前は…今日も?」


徹は円に視線を移すと、
ニッコリ営業スマイルを浮かべた。

円も真顔のまま会釈をする。


「どう?高山さん。
こいつ、助けてあげられてる?」

「ええ。もちろん。」

「そうなんだ!
たしかに、顔色最近いいよね。」

「おかげさまで。」


何気こいつらが話してんの初めて見たかも。


円は人見知りなのだろうか…

会話が弾む気配はゼロだ。


「あ、そうだ。
恭介、あの女子軍団との夏祭り本気で行くのか?」


3人で歩いていると、徹がそんなことを聞いてきた。


「あぁ、朝約束したやつだっけ。
行くよ。お前も来い。」

「はぁ!?一方的だな…。
まぁせっかくの女子との予定だし、行くけどさ…。」

「夏祭りって?」


会話を聞いていた円が俺の服をつまんで
上目遣いで尋ねた。

こういうことすんのが、凶悪だよなぁ…。


一瞬ドキッとした自分を押し殺し、
円の質問に答える。


「学校の裏の神社。
あそこ毎年お祭りやってるだろ。」

「あぁ、去年は行ったな。結と。」


その時、円の瞳が陰るのを見た。