「あんた、あれつまんなくないの?」

「何が。」


6月下旬ーー

相変わらず円との契約関係は続いている。


俺が暇な放課後は、
基本的に自習室か保健室に呼び出される。


今のところ誰にも見つかっていないのが
奇跡に近い。


「処世術だっけ?
本音かくすやつ。」

「つまんないつまんなくないとかの問題じゃないから。」

「ふーん…。」


現在、自習室。

円はせっせと椅子でベッドを作っている。

もう何度も利用しているから、
タオルケットも枕もロッカーに常駐させているようだった。


「じゃあ、おやすみ。」

「ああ。」


円は目を閉じると、
大きく息を吸い込み、眠りに落ちた。


最初と比べて、こいつの顔色もずいぶん良くなったな…。

眠る速度も早くなって、
時間も長くなった。

最近は下校時間まで眠って、
起こすこともあるくらいだ。


でも、相変わらず夜は一睡もできていないらしく、授業中もうつらうつらしている。


とっとと俺なしでも眠れるようになって、
音声データを消してほしいんだけどな…。

てゆうか、夏休みとかどーするんだろ。

人と一緒にいないと寝れないくせに、
学校がなくなって、俺とも会えなくなったら
最悪死ぬんじゃね…?


そんなことを考えてみるが、
だからって夏休みに円のところに通ってやろうとか
そんな慈愛に満ちた考えは頭からすぐにはじいた。