「帰ろっか。」

「…ああ。」


熱を帯びる顔を見られないように、
円の後ろをうつむきながら歩く。


とにかくこの女と早く決別するためにも、
正々堂々協力して、
こいつの不眠症治してやる…!


「じゃあ、ここで。
また明日。」

「あぁ、おつかれー。」


俺が速攻帰ろうとすると、
円は「待って」と呼び止めた。


「明日は不眠治療始める前に
解決したい問題があるから、それに協力して。」

「わーったよ。
どうせ拒否権ねぇだろ。」

「よくわかってるじゃん。
またね、宮」


円はくるりときびすを返すと、
あっという間に人混みに紛れていってしまった。


俺も立ち止まる自分にハッとなり、
その後は無心で帰路を急いだ。