円はしばらく泣いていた。
声も出さず静かに、
涙だけを膝に落としていた。
泣き終えると、
「ごめん」
と、小さく呟いた。
こんなやつに、俺は必死になる必要があるのか?
寝首をかくような真似をしなくても、
協力してやっていいかもしれない。
だって、
なんだか哀れだ。
円が泣き止む頃には、
俺の思考はそんな考えに至っていた。
「円。
不眠症になった原因とかあるんだろ?
教えろ。
内容次第では、スマホ奪うなんて考えはやめてやる。」
「やっぱりデータ狙ってたんだ。
急に素直になって、
私の涙で同情でもしてくれた?」
「まぁそんなところだよ。
言えよ。」
「……いいよ。」
円は真顔のまま、俺から目をそらした。