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夕焼けが伸びる頃、
私は最寄り駅まで宮と歩いていた。
「さっきはごめんね。
お父さん泣き虫で…私もか。」
「いいよ。」
宮は当たり前のように私と手を繋いだ。
「付き合ってること…言ってくれてありがとう。」
「円でも照れたりするのな。」
「うん…。お父さんには…なんかね。」
夕焼けに目を細める。
夜が
来る。
私は相変わらず夜が嫌いだ。
私は考えるのが苦手だし。
宮のそばにいることもできない。
一人でそっと眠る夜が
好きになれない。
「夜、嫌だなぁ。」
「また眠れてねぇのか?」
「そうじゃないけど…宮にも会えないし…」
宮は私と同じように夕日を見上げて目を細めた。
もうすぐ駅に着いてしまう。
あの角を曲がれば商店街だ。
「円」
呼び掛けられて斜め上を見上げると、
そっと宮の唇が触れた。
大丈夫だよと言っているような優しいキスだった。
「大学行ったら…一緒に住むか。」
「えっっ!」
私は思わず宮と距離をとる。
「一緒に…!?」
「そ。
そしたら夜も一緒にいれる。」
魔法みたいな宮の提案に、私の鼓動はどんどん高まる。
「いい!それいい!大賛成!!」
「ハハッ、急に元気。」
「だって最高だよ~」
私がニヤニヤしていると、
宮はまた私の唇を奪った。
「ま、夜眠らせねぇけど。」
「へ……//?」
硬直する私の頭に宮はチョップを浴びせた。
「この変態。」
「へっ、変態はどっちだ!!!」
宮はケラケラと笑い、
「また明日」
と言って帰っていった。