「あの、宮…」

みんなと談笑している中呼び出すのは大変心苦しいけど…
いや、『談笑』ではないか。
宮の目、笑ってないし。

小さな声で遠慮がちに呼んだのに、
宮はすぐに私に気づいてくれた。


「どうした?円。」

キュン…

さっきまでずっと一緒にいたのに…!
目が合うだけで心臓が上に引っ張られるみたい。


「帰ろう。」

私、どんどん欲張りになってる。

さっきまで一緒にいたのにまた?
とか思われてないだろうか。

せっかく宮が私を心配して付き合ってることを秘密にしようとしてくれてるのに、怒ってないだろうか。

不安だ。
怖い。

恐る恐る回答を待っていると、
宮は立ち上がって爽やかに言った。


「そうだね、帰ろう。」
「!!」
やった、嬉しい!

「みんな、また明日!」

「あ…ああ。」
「また…」

宮は私に小声で「行くぞ」と言うと、
みんなに手を振って教室を早歩きで出ていった。