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「それで!!!!?」
放課後、ひっそり教室に帰ってきた私をめざとく見つけ、強い語気で迫るのはもちろん結。
「あ、うん。
付き合うことに…なった。」
お互いの気持ちを確かめ合って、
キスもして、
私たちは放課後までずっと一緒にいた。
他愛のない話をしたり、二人のこれからの話もして…
付き合うことに決めたのだ。
「……」
あれ、沈黙…?
恐る恐る顔を上げて、私は仰天する。
「ゆっ、結!!?」
「うええええぇ円んんん!」
泣き声なんだか、私の名前を呼んでるんだかよくわからない。
「よかっ…ほんとにっ、よかった!」
「結、ありがとね。色々…全部。」
「うっ、うっ…」
「ちょ、結ちゃん大丈夫?」
教室にはまだ残っている人も数人いたため、
号泣している結を心配して少し人が集まってきた。
「ああ、平気。嬉し泣きだから。」
私が淡々と言うと、クラスメイトも仕方なく離れていく。
「円…相変わらずドライと言うか…」
「そ、そう?」
「いや、不眠症のときよりはだいぶ明るくなったけどさ。」
結はティッシュで鼻をかむと、
ひとまず落ち着いた様子。
自分では結構感情が表に出るようになったと思ったんだけどな…。
「あ、でも!
宮くんといるときはやっぱり違うよね!」
「え…!?」
「あ、恭介~!」
ドキーーーーッ
「どこ行ってたんだよ!」
「宮くん、サボり~」
「まあね、みんなお疲れ。」
ドンピシャなタイミングで宮が教室に戻ってきて、
クラスメイトに言い訳をしている。
「あれ、宮くん猫被ったまま。
それに、円とのことも言わないんだね。」
「うん…。いじめられるかもって宮が心配してるの。」
「あ~…それは確かに…。
懸命な判断だね。」
「女は怖いよ~」と結は完全に他人事だ。
まぁ他人事なんだけどね。
「でも…」
「ん?」
「私は宮と付き合ってること、みんなに言いたい。」
「えっ」
「だって……」
教室で堂々と宮と一緒にいたい。
私は恋人として宮のそばにいるために頑張ったのに。
私が黙っていると、結はぷっと吹き出した。
「やっぱり、円が人間らしくなるのは宮くんが絡んでるときだね!」
「えっ…」
「今、すっごい乙女の顔だったよ♡」
な、なんか嬉しい…
「円がやりたいようにすればいいんじゃない?
円は頑張ったんだもん。
それに!」
結は力強く私の肩を掴んだ。
「何があっても私は円の親友だからさ!」
「結…。」
にっこりと笑う結に、心がスッと軽くなる。
ホント、私の周りは優しい人たちばかりだ…。
「ほら、ボーッとしてると宮くんとられちゃうよ!」
結は昼休みのときのように私の背中を押した。
「うん…!行ってくる。」
私は宮のところへ歩き出した。