「ううん。
眠ったら答え出たよ。」

「えっ、どうするの…?」

結はごくりと唾を飲み、私の次の言葉を待つ。


「宮に伝えるよ。ちゃんと言葉で。
私にはそれができるから。」

「そっか。」


眠れなくてもいい。
逃げてもいい。

でも、宮だけは諦めたくない。


「明日言う。」
「あっ、明日!?」
「うん。決心鈍りそうだから。」
「えっ、じゃ、じゃあ!
明日早めに円の家来るから。可愛くしていこう!」

結はスマホでせっせと髪型やメイクを検索し始めた。

「プッ…結、急に張り切ってる。」
「当たり前でしょ!
円が緊張しなさすぎなの。」
「緊張くらいしてるよ。」
「私の方がしてる!」

私たちは顔を見合わせて笑った。

そのあとお父さんが帰ってくるまで、
結はずっと私のために明日の計画を練ってくれた。



**
翌日ーー

「円、みんな円のこと見てるよ!」
「えっ、変かな。」
「可愛いんだよ!バレンタインのときの100倍!」
「褒めすぎ。」

結は本当に早朝から家に来てくれて、
私に化粧を施してくれた。

自分でも確かにちょっとはましになったと思う。


学校に着き、昨日から考えていたラインを宮に送る。

決戦は昼休み。

私の踏み出した一歩が、
走り出す助走の一歩だったか
崖っぷちの最後の一歩だったか
今日決まる。


「円。絶対大丈夫。」
「うん…。」


いつも通り授業が始まった。

今日、まだ宮の方を振り向けていない。

シャーペンを持つ手が震える。


どうか
どうか…

来てくれますように。
言葉を伝えられますように。
宮の恋人として…そばにいる未来がありますように。