久々に眠れなかった。
寝不足の頭を持ち上げ、窓を開ける。
冷たい風は頬を刺し、
まぶたを透過して入る穏やかな朝日に眼球が痛んだ。
宮に
キス…された…。
昨日、突然帰り道に宮にキスをされ、思わず飛び退いてしまった。
そしたら、宮はすごい苦い顔をしていて…
怒ってるような、後悔しているような、
なんとも言えない表情だった。
でも、明らかにロマンチックな愛情こもったキスではなくて…
決定的な私を拒絶するような言葉を言われる前に
私は走って逃げた。
雪のせいで途中転ぶし、
不安とドキドキであまり眠れないし、最悪だ。
学校…行きたくない。
私がベッドでのそのそしていると、
お父さんが部屋のドアをノックした。
「円?早く目が覚めたから、朝御飯作ったよ。
食べるか?」
「いや…もう少しあとでいい。」
「そうか…」
くまを見られたくなくて、お父さんから顔を背ける。
「何か嫌なことでもあったのか?」
お父さんはいつも以上に優しい口調でそう尋ねた。
「嫌なこと…ではないよ。
ちょっと考えごとがあっただけ。」
「解決したか?」
私は首を横に振る。
「そっか…」
お父さんは勉強机の椅子に座った。
「円は夜、嫌いか?」
「大嫌いだよ。」
夜はお母さんを連れていってしまった。
「お父さんは好きだよ、夜。」
「え…」
思わず顔を上げてしまい、慌てて伏せる。
「静かで、一番一人でゆっくり考えられる時間だ。」
「それ、私の嫌いなところ。
ひとりぼっちで寂しくて、考えたくないことも次々に出てくる。
眠れない自分に腹が立つし。」
「別に無理に眠らなくてもいいんじゃないか?」
「へ…?」
お父さんの意外な答えに間抜けな声が出る。
「横になってるだけで身体は多少休まってる。
たまには悩み事を悩み抜いたり、月と星をボーッと見てても楽しいんじゃないか?」
「……」
「一人の時間も大事だよ。」
「わ…わたし…」
私は肩の力がスッと抜けたような気になって、
悩み事も話してみたくなった。