不眠姫と腹黒王子



駅にいつもより早く着いたように感じた。


「じゃ、また明日な。」
「……」

円は黙ったままだ。
まだ不機嫌なのか?
まさか怒らせた?


「円…?」

「私…
私のしたいようにしていいなら…

このままでいたい。」

「え…」

円は確かな光を宿した目で、そう言いきった。


「変でも、恥ずかしくても、
宮と仲良くなれた今の私の方がいい。」

「っ…」

「宮!今日ももっと一緒にいたい!
まだ帰りたくない!」


駅の中で、大声で、こいつ恥ずかしくねぇのかよ…

「っブッ…ハハ…!」

爆笑してる俺だってそうだ。
恥ずかしい。

でも、それ以上に…
おもしろくて、嬉しくて…
そんでなんか知らないけど、俺は感動してしまったのだ。


「お前、おもしろすぎ…っ」
「どーもありがとー!」
「ハハッ…かっけぇな。」
「??」

俺は円の手をそっと握った。

「えっ…」
円は顔を真っ赤にし、下を向く。

あー、くそ。
可愛すぎる…

俺は手を繋いだまま、円の家方面のホームまで引っ張ってった。

「宮…?」
「お前の家まで送る。」
「……うん。」

円は急に無口になり、繋いだ手の力をほんの少し強めた。