教室に着くと、すぐにクラスメイトに囲まれた。
円は当然のように黙ったまま俺から離れて、自分の席につく。


「おはよう!宮。」
「えっ、ああおはよう。」

「宮、昨日のドラマさ…」
「あ、なになに?」

意外だ。
金曜日、みんなの前で円の手を引いて教室を出たから、何かしら問い詰められるとは思ってたのに…

さては、立山さんが音速で言いふらしたな…


無意識に円の方を見ると、ちょうどコートを脱ぐところだった。
その仕草になぜかドキッとする。
なんか見てはいけないものを見てるみたいな…

って、俺はバカか。
中学生か!

「高山さん、最近めっちゃ可愛くね?」
「えっ」
ドラマの話をしていたやつが、俺の考えを知ってか知らずかそう囁いた。

「まぁ、前より顔色いいよな。」
「そうそう!一年のころ人気だったのやっとわかったわ。」
「ハハ…」
「宮がただの友達でいるの、すげぇわ。
あんなエロイ身体前にして…」
「ッチ…」
「えっ」

徹がいっつもそんな感じのこと言ってくるけど、
たいして円を知りもしない(俺的にも仲良くしてるつもりのない)やつにそういう話をされるのは、無性に腹が立った。

でも舌打ちはまずった。
誤魔化さねぇと。

「あ、悪い。ちょっと舌噛んだ。
てか俺一時間目の宿題やってなかったの思い出したわ。またあとで!」
「ああ…また…」

ちょっと言い訳苦しかったか…?
ま、いっか。

宿題をやるふりをして、煩わしいクラスメイトとの談笑を拒絶する。

俺…変わったよな。
前は爽やか王子様としての処世術に全身全霊かけてたのに。
だからこそ円とあんな契約結んだんだ。

なのに…最近詰めが甘い。
というか、どうでもよくなってきて…

って、ダメだ!
疲れてるからって投げやりになるな。
今の生き方が一番平和なんだ…!
俺はうまくやってる。


また無意識に円に視線を向ける。
心から楽しそうに佐竹さんと話す円を少し羨ましいと思った。