「あっ、宮。平塚くん。おはよ。」
「おはよう、お二人さん!」
学校に着くと、ちょうど下駄箱で円と佐竹さんに会った。
「はよ。」
「おはよー。結ちゃん、円ちゃん。」
予想はしていたけれど、円はいつも通りだった。
普通だったら頬赤らめたり、ちょっと避けたりするもんじゃねぇの?
あんなバレバレの反応したくせに。
『宮のこと、好きになってもいいの!?』
図らずもこっぱずかしい円の台詞を思いだし、
俺の方が赤面する。
そんなこと知る由もなく、円は徹となんか話している。
「平塚くんのチョコ、すごいおいしかったよ。
ね、結。」
「うん、男子が作ったとは思えないクオリティ!」
「まじで?二人のチョコも最高だったよ!」
「ありがとう。」
なんだ…
佐竹さんにもチョコ渡してたのか…
「あ、宮は?
おにぎり美味しかった?」
「おに…!!?」
「ぅおにぎりぃ!?」
佐竹さんと徹がすごい勢いで同時に俺の方を見た。
「え…ああ。うまかった。」
「よかったぁ~。」
次の瞬間、佐竹さんと徹がぶっと吹き出し、
続けてゲラゲラと笑いだした。
「ハハッ…どんまい、恭介。」
「円…甘くないものとは言ってたけどっ…」
何がドンマイなんだよ。
でも…だよな、笑えるよな。
どう考えてもこれは笑えるよな。
よかった。俺の感性間違ってなかった。
「え、そんなに可笑しい…?」
異常なのはコイツ。
「ま、おもしろかったな。おにぎりは。」
そう言うと、円は不安そうに俺を見上げた。
「だ…ダメだった?」
「っ…」
あー、くそ。
この前コイツが変なこと言うから、妙に意識してしまう。
「別にダメではないよ。うまかったし。
…ありがとな。」
ポンと円の頭を撫でると、円は穏やかな笑顔を浮かべた。
視線を感じてハッとなり、徹と佐竹さんの方を振り返ると、
さっきの爆笑とは対照的にニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべていた。
「(イラ…)行くぞ、円。」
「えっ、うん!!」
歩き出した俺の横に駆け寄り、嬉しそうに並ぶ円にまたドキッとした。