何…こいつ…。
「いいよ。忘れていい…。あの条件。
そもそも…!契約はとっくに終わってるしな。はは…」
俺は格好悪い言い訳を付け加えて、
ダサい苦笑いをして見せた。
「そっか…いいんだ…。」
「…っああ…。」
「嬉しい…っ」
息が
止まるかと思った。
今まで見たどんな女より
優しく綺麗な笑顔で、円は笑った。
同時に、心臓がとんでもない速さで動き始める。
まるで、今まで眠っていたみたいに。
「あっ、そう。これ、作ってきたの。」
そう言って、呆然とする俺に円は紙袋を手渡した。
他の女子や徹にあげようとしていた包みと違う…
「宮甘いの苦手って言ってたから…
おにぎり!!作ってみた!!」
「おに…ぎ……」
「じゃ、じゃあ!!」
円は俺に紙袋を押し付けると、小走りで教室をあとにした。
「おに…ぎり…」
俺はその場で尻餅をついた。
「はっ…ハハ…」
自分でも意味不明な笑いが口から出てくる。
いや、おにぎりって…
まぁ嫌いじゃねぇけど。
円らしいっつーか、なんつーか。
「ハハハ…ていうか…」
『宮のこと、好きになってもいいの!?』
あれ、もう好きって言ってるようなもんじゃね?
目を閉じて、まぶたに焼き付く円の笑顔を思い出す。
円は眠れるようになって、
逆に俺はようやく目覚めたとでも?
笑えねぇ。