不眠姫と腹黒王子




「ちゃんと来たね。」

「当たり前だろ。」


そのまま人気のない奥の方へ連れていかれた。


「あ、お茶でも飲む?
家で入れてきた水筒のお茶だけど…」

「いらねぇよ。」


ピシャッと言い切ると、
高山は少し目を伏せた。

長いまつげが小刻みに震えていた。


そんなんで同情したりしない。


「とっとと本題話せ。」

「うん…。」


高山はふぅっと息を吐くと、
俺に向き直って話し始めた。


「まず始めに言っとく。
録音のデータはパスワードかけてロックしてある。
だから簡単には消せないし、
あなたの対応次第では自宅にコピーを作る。」


くそ、こっちの考えはお見通しってか。


「そんなこと考えてねぇよ。
早く本題に行け。」

「そう?安心した。
じゃあ本題。」


高山は安心したと言う割には、
表情をひとつも変えず、淡々と続けた。


「協力の期限は私の不眠症が治るまで。
昼休みか放課後、寝る私のそばにいてほしい。」

「ふーん…
なんで俺ご指名な訳?」


まさか好きだからとか言わねぇよな?

高山は少し沈黙したあと、
俺の質問に答えた。


「言ったでしょう?
昨日、宮くんのそばで眠れたから。」

「それは、気絶したからじゃねぇの?」

「うーん、そうかもしれないけど…
なんか…違う気がする。
今もちょっと落ち着くし…」

「……。」


嘘言ってる感じはしないけど…


疑ってかかる俺の心を知ってか知らずか、
高山はひどいくまが浮かぶ目で俺を見上げた。