「え、宮…??」

「っっ…来いっ!」

そのまま、クラスのやつら全員が見ている中、
俺は円の手を引いて教室から出た。


女どもの高い声が聞こえたけれど、心底どうでもよかった。

俺は円の手を掴んだまま、早歩きでいつも添い寝をしていた自習室2へ逃げ込んだ。


「はぁ…はぁ…宮っ…?」
運動不足の円は、俺の早歩きにも息が上がっている。

「なんで…他の男からチョコもらってんだよ…」
「他の男って…平塚くん?」
「……」

なんか…感情が抑えられない。
理性が利かない。

「あれは友チョコだよ?
友チョコって知ってる?」

知ってるわ。
アホか。

俺は円の手を握り続けていた手に力を込めた。
「み、宮//!?」

「なんかやだ…。」

「なっ…なんで…?」

知るか。
アホか。

いや、

知ってるけど…。

「……」

「だ、だって!ダメって言った!!」

「え…」

「宮、絶対に好きになるなって言った!」

「っ、忘れろ!!」


「へ…」


円はキョトンとした顔で俺を見上げた。


あー、くそだせぇ!!!
顔から火が出るくらい恥ずかしい!

「くそ…ほんと、お前といると変になる…」


強く握っていた手を離し、俺は円に背を向けて髪をガシガシと掻いた。

何が爽やか王子様だよ。
円の前だと何ひとつ決まんねぇし。
いつも振り回されてるし。

ほんと、だっさ…


「い、いいの…?」

「あ?」

「み、宮のこと、好きになってもいいの!?」

「は…」


円の方に振り返ると、今まで見たことがないくらい目をキラキラ輝かせていた。