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「礼 着席」
やべえ、早く教室から出ねぇと…
チョコの波が押し寄せる…!
てか、円との約束って今日だよな?
昨日からどこで会うとかなんの連絡も来てねぇけど、あいつ忘れてるんじゃ…。
今日妙にめかしこんで、友達にチョコ渡してたしな…。
円の方をちらっと見て、肩にかけていたバッグがずり落ちた。
「と…おる…?」
俺の視線の先には徹に手を握られている円がいた。
は?あいつ何やってんだ?
てか、円も…振りほどけよ…。
「あの…宮くん。ちょっといいかな…。」
「……」
「宮くん…?」
なんで…
なんで笑ってんだよ、あいつ。
「宮くん?」
「ごめん、無理。」
「え…」
俺が円たちの方へ歩き始めた瞬間、
笑顔のまま
円が徹からチョコらしきものを受け取った。
俺の中に言い表せないモヤモヤが拡がる。
なんだこれ。
なんだこの気持ち悪い感じ。
すげえやだ。
円が自分のカバンから小さな包みを取り出した瞬間、
モヤモヤを置き去りにするように俺は大きく足を踏み出して、
円の手を掴んでいた。