「平塚くん」
振り返ると、にこにこと笑う平塚くん。

「あれ…ホームルームは…」

「今日はないよ?朝先生言ってたじゃん。」

「え…」
またボーッとしてたんだ…。

「ホント、今日の円ちゃん可愛いなぁ。」
「え?」

突然、平塚くんは脱力していた私の手を握り、
胸の位置まで持ち上げた。

「な、何…!?」
「ん~、お手つき。」
「はぁ?」
「あっはは…!素直な反応。
他の男に円ちゃんが狙われないように、だよ。」

ますます意味わからん。

「……」
「そんな嫌そうな顔しないでよ♡
これから恭介のとこ行くのに、他の男に邪魔されたくないでしょ?
今日、円ちゃんを狙ってる男いっぱいいるんだよ?」
「私を狙う?
ありえないでしょ。」
「ありえなくないって。
円ちゃん、前も可愛かったけど、今はさらに可愛いし。」

よくそんな軽い台詞言えるなぁ。
呆れて、なんか逆におもしろくなって私はふっと笑った。


「ハハッ、かーわい。
そんな可愛い円ちゃんに、はいこれ。」

平塚くんは私の手を離すと、
ポケットから小さな包みを取り出した。

「俺の手作り友チョコ~」
「え!いいの?」

私は平塚くんからチョコを素直に受け取った。
男の子も手作りとかするんだ。
ラッピングとかキレイだな…すごい。

「円ちゃん、今日うまくいくといいね。」
「……」

平塚くんは私の頭をポンポンと撫でた。
たしかに距離近いし、チャラいとは思うけど…
「ありがとう。平塚くんは優しいね。」
「……」
「あ、私のチョコも。
これ、ブラウ…」

その瞬間、私の体は強く後ろに引っ張られた。