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2月14日ーー
バレンタインデー当日。
髪をしっかり整え、ほんの少し化粧もして、私は学校に来ていた。
私の脳内。
朝から歩兵が「出陣じゃ~」って槍もって押し寄せてる光景。
別に告白するつもりはないから、
今日告白しようとしている女の子達の心境に比べたら軽いものだけど…
私にとっては一大事だった。
「おはよ、円。
ちゃんと宮くんの、手作りしてきた?」
「うん。これ…
あ、結にも友チョコ。ブラウニー。」
「まじ?やった!
宮くんに夢中で忘れてると思ってた~!
毎年楽しみなんだ、円のチョコ♡
あ、これ私のね。シフォンケーキ。」
「ありがと。」
「髪もメイクも素敵!
円らしくて可愛いよ。」
結にそう褒められ、顔が思わずにやける。
こういうイベントに一生懸命参加できるのって、すごい楽しい。幸せだ。
「朝、お父さんにもあげてきた。
お昼に自慢するんだって…」
「円パパデレデレだね!」
「エヘヘ…お母さんの仏壇にも、あげてきた。」
「きっと喜んでるよ!」
「うん…。
あ、そうだ。京子ちゃんとか篠原さんの分も作ってきたから、渡してくる。」
「うん。行ってらっしゃい!」
夏祭りで仲良くなった京子ちゃん
修学旅行で同じ班だった篠原さん
あと、修学旅行でちょっと喧嘩して仲直りした佐藤さんにも、チョコを渡したら笑顔で受け取ってくれて、お返しのチョコももらった。
不眠症で辛いときも頑張ってきてよかった…!
「円、そういえばいつ宮くんに渡すの?」
どっ
ドドドドドド
『出陣じゃ~』『戦じゃ~』
結のその質問に、脳内が一気に戦国時代に引き戻された。
手にじわじわと汗がにじむ。
「…放課後じゃ…」
「は?」
約束している放課後まであと2時間を切っていた。