宮を見上げると、外側の肩が濡れていた。
寒がりなくせに…

「宮。」

「ん?」

「私はもっと、宮に近づきたい。」

「っは!?」

私がぐっと宮との距離を縮めると、
宮は一歩身を引いた。

「お前、なに考えてんだよ!!」


宮の側に、もっとその匂いの近くに
とか考えてんの。
私って変態なのかな。

あ、ていうか…宮のこの顔…
前無理言って一緒に寝ようとしたときと同じ。

困らせてる。

こんなことじゃ、好感度上げるなんて程遠いよ。


「宮の肩、濡れてるから。」

「え、ああ…」

「ごめんね。私のせいで。」

「そ、そういうことか…
いいよ。もう駅着くし。」

「ありがとう。」


駅に着くと、宮は私に傘を差し出した。

「貸してやるよ。
俺の家、駅から近いから。」
「いい。」
「いや、寒いし。お前マフラーもしてねぇのに。」
「へーき。傘持ってるから。」

「は……?」

カバンから折り畳み傘を取り出すと、
宮がわなわなと唇を震わせた。

「は!?なんだよ、お前!
何がしてえんだよ!!」

「宮と一緒に帰りたかった。」

「っっ…」

「騙してごめんね。」

「っ…ふっ…ハハ…!」

宮はお腹を押さえて笑い始めると、私の頭をポンポンと軽く叩いた。

「やっぱ円、変わってねぇわ。
相変わらず、変なヤツ。」
「変…?」

宮はひとしきり笑い終えると、自分がしているマフラーを私の首に巻いた。

「次からは普通に誘え。」
「……」
「また明日な。」

マフラーをそのまま、宮はちょうど来た自分の方向の電車に乗って帰っていった。


私の認識『変』って…。
好感度、高くはないよな。
上げてもないよな。

事前調査はちょっと失敗だけど、
なぜか悪くない気分だった。


「マフラー、いい匂い…」

そんな変態発言を残して、私も上機嫌で帰りの電車に乗った。