その前に…
私、今から宮と相合い傘して帰るんだよね。
この状況…ヤバい。
こうなったらせっかくだ。
結に指示された+αの調査、やるっきゃない!
調査③
好感度調査。できれば上げとく。
「俺の傘そんなにでかくねえけど…いいの?」
「うん!なんかごめんね。
結、急ぎの用事で…」
部活のない生徒の帰宅ラッシュが終わって、
昇降口はあまり人がいなかった。
宮の隣に肩を並べて歩き出す。
外側に持ったカバンにポツポツと冷たい雨が当たっている。
それに意識をそらして緊張をまぎらわしていた。
だって…久々の宮の匂いだ。
今は眠くなるというより安心感が私を埋め尽くしている。
「円?」
「えっ」
宮に呼ばれ、ボーッとしていた頭が一気に冴えた。
「ごめん。何?」
「ははっ…やっぱちょっとボーッとしてるよな、お前。」
「あ、うん。なんかくせになっちゃって。」
「クラスのやつらがさ、最近円が明るくなったって言ってたよ。」
「え…」
「印象よくなったって。」
「……」
嬉しい…。
「あー、さっむ。」
宮は傘を持っていない手をポッケに突っ込んだ。
「宮にはどう見える?
私、変わった?」
「んー…たしかによくしゃべるようになったし、元気になったかな。」
「うん…」
「でもボーッとしてるし、そんな大差ねぇよ。」
「えっ…そうかな…。」
「あ、でも」
冷たい手が一瞬おでこに触れ、私の前髪を掻き分けた。
「顔色はよくなった。」
「っ…//あ、うん…。」
宮はその手をまたポッケに戻した。
心臓がぎゅうぎゅうと掴まれているような感覚。
安心感を感じると同時にドキドキも止まらない。