調査②
14日の予定は空いているか。
「みっ、宮!」
翌日の帰り際、みんなに囲まれている宮に勇気を出して声をかけた。
宮は案の定、「何?」と私の側に来てくれた。
これはキャラだから。
みんなに優しい宮くんだから。
そう期待をすぐに抑え込む。
私は宮にこっそり耳打ちをする。
「今日、傘忘れたの。
一緒に帰ってくれない…?」
言った後、私の心臓は内側からドンドンとさらに強く私を叩き始めた。
宮はキョトンとしている。
そりゃそうだ。こんなこと初めて言ったもん。
「悪い、今日円と勉強する約束してたんだ。
みんな、また明日。」
「おう…また。」
「え~、残念。」
「また明日ね~」
「行くぞ」
宮は小声で呟くと、教室の外へ歩き出した。
い、いいんだよね…?
やった…!
私も慌てて宮のあとを追いかけた。
**
みんなが帰るまでやりすごそうと、
昨日お昼を食べた空き教室に来た。
「珍しいな、一緒に帰ろうなんて。」
宮はどすんと手近な椅子に腰掛けると、
窓の外を見ながらそう言った。
「うん…。傘なかったし。
あんまり…最近話してないから。」
「たしかに。」
宮のとなりの席に座る。
宮はしとしとと音を立てる窓の外を見つめたままだ。
「もう寝れてんのか?」
「え、うん。」
「そっか。」
「あ、えっと…今まで本当にありがとね。
この間も…。全部宮のおかけだよ。」
「どういたしまして。」
「……」
緊張…するけど!
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「あ、お、お、お礼!
あの…渡したいから…放課後空いてる日…とか。ある?」
「別にいらねぇよ。」
今まで窓の外を見ていた宮が私の方に顔を向けた。
それだけで緊張が倍増する。
「や!私の気が済むから…。
お願いします。」
「…放課後って、今は?」
「ま、まだ準備してない!」
「あー、なら明日でも明後日でも…」
「明後日もいいんだね!おっけ、じゃあ明後日。」
宮はいぶかしげに私の顔を覗き込む。
「なんかお前、妙に元気だな。」
「えっ、そ、そうかな~?」
「……」
うそっ、バレた?
やっぱ明後日(バレンタインデー)を強調しすぎたか…!?
「寝るだけでそんなに元気になんだな。
よかったよかった。」
宮はなんの疑いもなく膝をぽんと打ち、立ち上がった。
「雨足も弱まったし、みんなも帰っただろうし、俺らもそろそろ帰るか。」
「あ…うん。」
なんも意識されてないことがわかったけど、
引き換えに14日の予定も確保できた。
よし!決行するぞー!!