「えっと…うまく言えないんだけどさ。」

「うん。」

「前に進みたい気持ちはすごいある。
でも、宮に迷惑かけたり無理はしてほしくない。
側にいたいんだ。宮が好きになるなって言った以上、友達としてでも。」

「円は遠慮しすぎだと思うけどな…」

「エヘヘ…まだそんなに欲張りになれないよ。」

私が苦い笑顔を向けると、結もまた無理して笑って見せた。

「だから告白はしない!」

「じゃあさ…もし宮くんが例の条件をやめにしようって提案してきたら?」

「っえ?ないない!
宮の性格的にあり得ないよ。」

「そうかな?
だって円さ、端から見てたらめっちゃ脈ありだよ?」

「っっえ…!」

脈あり…??
宮が私を好きっぽく見えるってこと?

「そ、そんなわけ…」
「あるよ!だって宮くん、円といるとき平塚くんといるときくらい素だしさ。
いつも円のこと気にかけてる。」
「それは…単に倒れたりしたら心配ってだけで…」
「不眠症の治療も、めっちゃ協力的だったじゃん?」
「……」

う、嬉しい…!
こんなの結におだてられてるだけだってわかってはいるけど、にやけが止まらない。

睡眠ってすごいな…
今までは「ありえない」で一蹴していたことが、
淡い期待になって私の心に残る。
その余裕が生まれる。


「だから、この間やったドキドキ作戦。続けてもいいと思うな。
惚れさせて、例の条件を取り消させるの!
もしくはコクらせる!!」

「そんなうまくいくかな…。」
結はまだ宮の俺様な性格の部分を甘く見ている。
惚れたからって、自分から条件を取り消すようなアホな真似はしないと思うんだけどな…。
プライド高いから。
宮に悪いから結には言わないけど。

「よし、バレンタインだ!」
「へ…?」

私が宮の腹黒さを反芻しているうちに、
結は突拍子もないことを言い出した。