「顔色もすごくいいよ!
円の可愛さ、もう元通りだね。」
「えへへ…お世辞ありがと。
結も風邪すぐに治ってよかった。」
「…で~も~!」

シリアスな空気が一変、
結は私のほっぺをつねりあげた。

「っ、いった!!結、痛い!離して!」
「髪~!!なんで寝癖だらけなの!」
「いっ、いたいいい!」

結が私のほっぺを離すと、すぐに櫛を取り出し私の髪をとかし始めた。

「もう元気になったって言うなら容赦しないよ。髪、毎日絶対ブローしてきなさい!」
「ええ~、めんどくさ…」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?
宮くんは!?いいの!?」
「え、宮がなに?っ、いてててて!」

今度は後ろから耳を引っ張られる。
結さん、こんな暴力的でしたっけ…?

「不眠症が治ったんだから、前に進もう。
円も前に進みたいって思ってるんでしょ?」
「そう…だけど、さ。」
「好きになるな、なんていう条件無視だよ無視。」
「そうは言ってもさ…」

私はたくさんの友達と談笑している宮の方をこっそり見る。
すぐにため息が出た。

『嫌われたくない。』

もう、ほんとにそれ一択。

私はどうして宮が最初にあんな条件を出したのかなんとなく想像がついていた。
たぶん宮は恋とかにシラケるタイプ。
用心深い性格だから、相手の真意を探って探って、ちょっとでも粗を見つけたらすごく嫌悪感を抱く。
大好き大好きって言ってくる女子嫌いそう。
すっごい想像つく。

だから、ダメ。

だって、
だって、
私今宮のこと大好きで大好きでたまらないもん!

俺スリムな子が好き。→Yes。断食します。
お金貸して。→Yes。お年玉下ろします。
今すぐ来て。→Yes。夜中でも飛んでいきます。

この思考回路。
宮のためならなんでもしたい。
好きで仕方ない。
だから「一緒に寝よう」とか「宮になら何されてもいい」とか言って、宮を困らせてる。

こんな気持ちでこれ以上宮に接していたら、
絶対にうざがられる!