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「円、ほんっとにごめん!」

帰宅早々、お父さんは涙ぐみながら私に頭を下げた。

「おかえりなさい、お父さん。
……何??」

「ホント、何度も何度も断ったんだけどな…。
今回だけって聞いてくれなくて…」

「だから何の話?」

「…今度の土日…出張になった…。」

「…そう。」

「そんなあっさり!
お父さんは円が心配で心配で!」


お父さんは私が倒れたあの日以来、
努めて家に早く帰ってくるようになった。

きっと会社にかなり無理を言ってくれたのだろう。
私の夜ご飯の時間には帰ってきて、
一緒にご飯を食べてくれる。

私はそんな毎日が本当に本当に嬉しかった。


だから久々の出張くらい…
「へーきだよ。」

「じゃあさ、結ちゃんとお泊まり会するとか…。」

「だから大丈夫だって。
今までも夜はずっと一人で起きてたし。
最近は浅くだけど眠れるし。」

「でも…」

これ以上はしつこいと思ったのか、
お父さんは何かを言いかけて飲み込んだ。
眉を下げて私から目をそらす。

なんで私のことなのに、お父さんの方が寂しそうなんだ。
まるで私がなくした感情の分まで寂しがってくれてるみたいだ。

なんか、心の底の方があったかくなる。


「…お父さんは、
誰かが来てくれた方が嬉しいの?」

「っ!もちろん!
嬉しいよ。お父さんも、円も。」

「そう…。」

ポケットからスマホを取り出し、SNSのトーク履歴を開く。

「宮…も、呼んでいい?」

「えっ…」

お父さんは私の質問を聞き、数秒硬直した。