不眠姫と腹黒王子




やはり表情は真顔のまま。

「宮ならいい。」
さも当然と言うように、続けて強調した。


そのあとしばらく、二人とも沈黙し続けた。


「ハァ…わかったよ。」
先に折れたのは俺の方だった。

折れたと言っても、円に何かしようっていうわけじゃない。
隣で寝ることを受け入れたのだ。


俺はブレザーを脱ぎ、モゾモゾと円の隣に身体を潜らせた。


別に気にすることない。
だって円だ。
友達だし、こんな性格だし。
俺のタイプの『明るくて友達が多い小動物系』
とはかけ離れてるし。
円も全く気にしてない様子だし。

気にしてる俺の方がバカみたいだ。


円は布団に入った俺を見ると満足げに頷き、
いつもより狭い寝床で横になった。


俺も円に背中を向ける形で寝転がり、固く目をつむる。


窓の外で部活動をする生徒の声がやけに大きく聞こえる。

ていうか、窓開いてないよな?
ちゃんと入り口の鍵閉めたっけ?


俺の心配なんておかまいなしに、
いつも通りものの1分程度で円の寝息が聞こえ始めた。

こいつ、俺の方むいて寝てないか…?
気配的に…。

ホント無防備なやつ!!


振り返りたいような振り返ってはいけないような、
居心地の悪い気持ちでいっぱいになる。

安定している円の寝息とは対照的に、
俺の心拍はどんどん早まっていった。


「寝れるか、バカ…。」
そうつぶやき、俺は固く閉じていた目を開けふっとため息をついた。