不眠姫と腹黒王子




「お前、何言ってんの?」

「だから、一緒に寝よって。」

こいつ本気か!?
小学生かよ!

一緒に寝て、何にもされないと本気で思ってんのか?


円の顔はいつも通りの真顔。
起き上がり、少し乱れた髪を整え、ベッドを半分空けた。

マジで…?

俺の鼓動はどんどん速度を上げていく。
変な汗も出てきた。


「お前さ、もう少し自覚持った方がいいよ。」

「自覚って?」

「だからさ…お前は…女じゃん?
で、俺は男。」

「うん。」

『うん』って!!!

「親父さんが泣くぞ。」

「だって…」

円はうつむき、ふかふかの布団をぎゅっと握りしめた。

「宮が寝不足なのって、試験前なのに私に合わせて朝早く来てくれるからでしょ?」

「え…」

「私…宮と対等な友達になりたい。
きっと宮、私のためにって気を遣ったり、
自分の生活をどこか削ってるんでしょ?」

「だからそれは俺が好きでやってることだって。」

「私は気を遣われている気がしてならないの。」

「あのなぁ!なら言うけど、お前だって俺に申し訳ないと思ってるだろ。」

「そりゃ思うよ…。」

「俺はお前と一緒にいるのが楽しいから朝早く行く。
そんで、暇だし家にいるより勉強進むから放課後もお前に付き合う。
それでお前が喜んでくれるなら、なお嬉しいんだよ!
自分のために行動してんの。」

円は面を食らった様子で、口を半開きにしている。

「それに『ごめんごめん』って謝って、
対等にしてないのはお前の方だろ。」

「…私、」
円は力強く布団をつかんでいた手を緩め、
自分の目を少しこすった。
「宮に哀れまれてるんだと思ってた。」

「今はもう違う。」

「嬉しい…。ありがとう。」

円は顔を上げると、少し潤んだ目を細めて笑った。

ようやくこいつの心からの『ありがとう』が聞けた気がする。