その時、始業のチャイムが鳴った。

「宮、また放課後ね。」

円の下手くそな笑顔に、言いたいことが喉の先まで込み上げてくる。

"どうして放課後まで話さない前提なんだ。"
"友達なのに遠慮してんじゃねぇ!"
"何か言いたいことがあるならちゃんと言え。"
"無理して笑うな…。"

それらを脳内で一旦再生して、俺は唾と一緒に飲み込んだ。

「…また。」


こんなんじゃ対等な友人関係じゃない。

円はいつもそうだ。
俺がしてるのは『協力』なのに、円はいつも申し訳なさそうにしている。
感謝の言葉より謝罪の言葉の方が多い。

別に感謝をしてほしいわけじゃない。
でも…俺を当たり前のように上に持ち上げるのはやめてほしい。

今こんなことを円に言っても、きっと円は意識してお礼を言うようになるだけだ。
それじゃあなんの解決にもならない。


もうすぐ…
円の不眠症が治ればきっと…。


俺は解決を先伸ばしにして、授業の準備を始めた。