数十分後、クラスメイトがチラホラ登校してくると、俺の好きな雰囲気はなくなってしまう。


「宮、おはよ。勉強?」
すぐにクラスメイトの一人が話しかけてきた。

「おはよう。そう。
円、頭いいから教えてもらってるんだ。」

「へぇ~…。朝から真面目だよな。
ああ、俺も朝学習しよっかな!焦るわ~。」

それ先週も言ってたよな。
なのにお前が朝早く来てんのも、放課後残ってんのも見たことねぇんだけど。

「俺が家でやるのが苦手なだけだよ。」

「俺家でもやらねぇもん(笑)」
やれよ。
「やる気でないよな~。家だと。」


ああ。ほらな。
静かだった空気も心も、一気に騒がしさに包まれてしまう。


「また宮くんと高山さん二人で…」
「ええ~、まさか付き合ってないよね?」
「ないでしょ…。」
「あたしたちの王子様独り占めしたらマジウザくない?」
「ねー。」
「でも最近あの二人よく一緒にいるよね。
宮くん、他のクラスメイトと話す機会減ったと思わない?」
「たしかに…。」
「宮くんどうしちゃったんだろ。」


どいつもこいつも気に障る。
俺のことも円のことも表面でしか見ていない。
円はキレイだ。見た目も心も。
俺は真っ黒だ。真面目でも王子様でもない。

俺と円が一緒にいることがどうしてそんなにおかしいと思われなきゃいけない…。


「宮。もう自分の席に戻っていい。」

「え…」
どうしたんだ、急に。

円の顔から朝の柔らかい笑顔はなくなっていた。

「ごめん。」

「なんで謝るんだよ。」

「宮、不機嫌だから。」

「っちが…」

俺は…お前ともっと…

「私といるせいで宮の友達の幅が狭まってしまうのは申し訳ない。
放課後も朝も、嫌なら全然来なくていいんだ。」

「嫌だなんて一言も言ってないだろ。
俺がやりたくてやってることだ。」

「…ありがと。」


円はさっきとは真逆の悲しそうな作り笑いをした。