「ありがとう。」
「やっぱ今日は不気味だな。」

宮は私に嫌味を言うと、ゆっくり視界を袖で覆った。

契約して初めて眠れたときと一緒だ。

まぶたを透けて入ってくる光も消えた、真っ暗な視界。
眼球に染みる温かさ。
柔軟剤のいい匂い。

今はそこに、いつもより早い、でも心地よい心臓の音が加わっている。


「今日楽しかった。来てよかった。」

「ああ。」

「またみんなで出掛けたい。」

「…ああ。」

「おやすみ。」

「おやすみ。」


私の意識は深く深く沈んでいった。


「『みんなで』か…。簡単に言うよな。」


**

数分後、宮に起こされ、間もなく乗り物を降りた。

結局宮をドキドキさせることはできなかったけれど、まぁいいか。
と、ボーっとする頭で考えた。

日は沈み、辺りはすっかり暗くなっている。

大嫌いな夜の始まりの時間、
初めて私はささやかな幸せを感じることができた。