行き場をなくした宮の手は寂しそうに引っ込められた。

「…あっ、う、動いたね、宮!」

「ああ…。」

宮の悲しそうとも怒ってるともとれる表情と声に体が固まった。

出てくるどんなお化けより怖い。

私…失敗した…??

ダメだ。
あんなにシミュレーションしたんだから、
ちょっとくらい作戦成功させたい…!

まだ諦めるな。
次ビックリしたついでに…!ついでに密着…!!


次にお化けが出てきた瞬間
私は「わっ」と驚いたふりをして宮の腕を掴んだ。

宮は私の反応にもお化けにも微動だにしない。


「あはは…い、今のはびっくり。」

「…。結局怖いの?」

「うん…。」


宮は私のぎこちない笑顔を見つめ、
腕をつかんでいた私の手をとった。

振り払われる…!?

そんな予感が頭をよぎった瞬間、
宮は私の手をぎゅっと握った。


「何してんの…。」

「怖いって言うから。」

宮は私の指の隙間に無理矢理自分の指を絡め入れ、
手と手の密着度を高めた。

「み、宮…」
「珍しい。動揺してる。」

宮はまた嬉しそうに私の顔を覗き込んだ。


違う。
今日は私が宮をドキドキさせる日…

私はただ握られていた手に力を込め、
宮の手を握り返した。

それでも宮は涼しい顔をしている。

それでも…
別にいい。


ちょうどよく大きい音と共に目の前にミイラが降ってきた。

驚く代わりに、宮の手を握る力を強め、
彼との距離を詰める。

宮も、黙ったまま私の手を自分の方に引き寄せた。


何これ。
何この感じ。

お化けなんて微塵も怖くない。

ふわふわ、ドキドキ…

宮に、呪い殺されてしまいそう。


私は始終違う意味でドキドキしたまま
お化け屋敷を出ることになる。

明るくなる直前、手を離す宮の顔を見上げることはできなかった。