不眠姫と腹黒王子




「お次のお客様、どうぞ…」

怪しい黒マントを被ったお姉さんに促され、
私たちは暗幕をくぐった。

中は古びた鉱山のような真っ暗な洞穴と、
2人乗りのトロッコのようなもの。

「なんだ、歩くんじゃないんだね。」

「乗り物ならそこまで怖くねぇじゃん。」

「うん…。」


宮が地味に楽しそうにトロッコに乗り込む背後で、
私の頭の中はうまく宮と密着することで頭がいっぱいだった。

歩く形式なら
「怖いから」「暗くて足元が見えないから」
で、腕を組んで自然と密着できたけど、
乗り物形式は密着する理由が難しい。

さっき、実は怖がりっていう設定にしておけばよかった…。


「円?乗らねぇの?
もしかして怖い?」

ちゃ、チャンス…!
私は黙って宮の質問にうんうんと頷いた。

「珍しいな。」

宮はなぜか嬉しそうに笑いながら、私に手を差し出した。


こ、これなら…
自然に手を繋いだ…まま…


「…っ…あ、その…」

「円?」


ずっと…手をつないで…
数分間も?

私の体温は伝わらない?
脈とか。
私の気持ちも一緒に伝わってしまわない?

じゃあ途中で手を離したら…
意識してるって思われるかも。
可愛げもない。

どうしたら…


その時、真っ暗な洞穴の中から
「キャーー」
という悲鳴が聞こえ、私はぐるぐる回る思考から我に返った。


そして、勢いそのまま、
宮の差し出した手をつかまずトロッコに乗り込んだ。