「宮くん、円。」
私たちの顔を見て、安心したように結の顔が綻んだ。
それを見て、私も同様に顔の緊張がほどける。
「円ちゃん、怪我ない?」
「まぁ、うん。」
平塚くんの質問に対して、私は真顔で返答した。
わざわざセクハラされたなんてみんなに公表することもないよね…
こんな時に私の動かない表情が役に立つなんて…
皮肉だ。
その時、何となく見た宮が眉をひそめていて
思わずビクッとなった。
「良かった。じゃあ飲み物飲んで、ちょっと落ち着いたらまた遊ぼっか。」
「うん…」
「おい。」
宮が王様みたいに私を見下ろしながら、
ぶっきらぼうに呼びつけた。
「何…?」
「……っ、ちょっと来い!!」
宮は私の手を無理やり引っ張り、
結と平塚くんといたベンチから遠ざかっていく。
「宮…どうしたの?」
結たちから少し離れたところで立ち止まると、
宮は私の手を握ったまま言った。
「なんか我慢してるだろ。
遠慮でもしてんのか。」
「えっ…」
な、なんでバレて…
「あのヤローになんか嫌なことされたのか?」
「べ、別に…」
宮は私の曖昧な返事に舌打ちをすると、
私の頬を軽くつまみ上げた。
「いっ、痛い…っ」
「何下らねぇ小芝居してんだよ。
お前の腹の中なんて透け透けなんだよ。」
「さすが、腹黒が張り付いてるだけある。」
「うっせー。なんかあんならとっとと言え。」
「ははっ……」
私は自分でも違和感を感じるくらい不自然な愛想笑いをした。
そして張っていた気と表情が一気に緩み、
私はその場に膝をついてしまった。