「何してんだって聞いてんだけど。」

「は、離せ…!」


男は宮から逃げ出そうと必死に体をひねっているが、宮はその手を離さない。


「円ちゃん、大丈夫?」

今度は優しい声で後ろから平塚くんに声をかけられ、強張っていた肩の力がスッと抜ける。

「円っ!」

結も追い付いてきて、私に抱きついた。


「ごめんっ、私何もできなくて…」

「ううん。全然平気だよ。
私こそ振りほどけなくて…ごめん。
結は大丈夫だった?」

結は目に涙を溜めながら、コクリと頷いた。


「悪かったって。もういいだろ、離せよ。」

「……
おい、徹。」

「はいはい。」


平塚くんは立ち上がって、宮の側に行き、
男が落とした鞄の中身を漁り始めた。


「っ、な、何してんだよ!」

「あー、あった☆」


平塚くんは見つけた生徒手帳と本人を素早く写真に納めた。


「な!何を!」

「SNSに晒す。」

「は!?ふ、ふざけんな!」

「ふざけてんのはそっちだろ。
友達傷つけられて黙って見逃す男がどこにいんだよ。」

「だから悪かったって!頼むから!」

「なんで俺に謝ってんの。バカなの?」


男は私たちに向き直り、深々と頭を下げた。

「す、すみませんでした…。」


私たちは黙ってその姿を見ていた。