「えっ、円!?」

「この女…!」
「飯田!大丈夫か!?」


殴った男は一歩後ずさりするが、
すぐに立て直して私の腕を掴み上げた。


「なめやがって、この女…。」

「なめてんのはそっちだ。」

「へぇ~。美人で気が強いって、逆にいいじゃん。」

「そういう趣味?もう一発殴ってやろうか。」


睨み合う私と男に、周囲もざわつき始める。


「おい、飯田。やべぇぞ、そろそろ。」
「いい加減逃げるぞ。」

「待て!このままじゃ気が済まねぇよ。」


男は私の手を引っ張って列から出た。

まずい。振りほどけない…!


「円っ!」


カップルのケンカとでも思っているのか、
周りもなかなか助けてくれない。


「離せ!どこ連れてく気?」

「そんな口が利けなくなるまでしつけてやるよ。」

「は?意味わかんな…」


その瞬間、にやっと笑った男は私の胸を周りに気づかれないように触った。


「意味わかった?」

「っ…////!!」


なんで…こんなこと、こんなやつに…



「おい、何してんだよ。」

その時、鳥肌が立つほど冷たい
聞いたことのある声が私たちの歩みを止めた。


「宮っ…」

「っ…!やべ…」


走って逃げ出そうとする男を宮はあっさり捕まえた。