不眠姫と腹黒王子




「円?」

「でもね…ダメなんだ。」

「だ、ダメって…?」

「最初に言われたの。
『俺のこと絶対好きになるな。』って。」


最初に契約をしたとき、宮が出した条件。

この条件を気にしていたからこそ、
気持ちに気づくのが遅れた。

意識的にも無意識的にも好きになるなと脳が命令を出して、
不眠症でも頭がいっぱいだった私をその命令は縛り上げた。

でも…倒れた日、宮が友達だと認めてくれて、
ようやく心に余裕ができて理性の先にある気持ちに気づけた。


「な、なにそれ…。
なんで!?」

「迷惑なんだって。
だから、好きになっちゃったけど言わない。
宮に迷惑かけたくないよ。」

「迷惑なんて…そんなの円のこと知らなかったから言っただけだよ。
今はあくまで友達なんでしょ?」

「うん…。」

「契約も終わったんだし、
条件にこだわりすぎなくて良いと思わない?」

「私も…宮にもっと近づきたいと思うよ。
でも、また宮を失うのが怖い。本当に怖い。」

私はきっと今、宮なしじゃ生きられない。

「そっか…」


結は悲しそうに目を伏せた。


「じゃ、じゃあさ!
好きって言わなくても言わせれば良いんじゃない?」

「え…??」


結の突拍子のない提案に私は一瞬思考を止めた。