「さて、私は入院の手続きしてくるよ。」

「うん、ありがとうお父さん。」

「結ちゃん、宮くん。
君たちも送っていくよ。一緒にいこう。」

「はい。」
「ありがとうございます。」


二人はお父さんに続いて椅子から立ち上がった。

「じゃあ、また明日来るね、円。」

「ありがとう、結。」

宮は黙って振り返った。
つまらなそうな顔をしているけど、
きっと私が眠れるか心配してるんだろうな。

「宮…。またね。おやすみなさい。」

「今夜寝れんのかよ。」

「宮と仲直りできたから…多少は…」

「…。」


宮はなにも言わずに歩き出した。

結は「よかったね」と小声で私に囁いて、
小走りで宮とお父さんのあとを追いかけていった。


うん、よかった。

お父さんに言えて肩の荷が下りた。
あんなに泣いてくれて、
大事にされてるんだって自覚できた。

それに、やっぱり私にとって宮は大きな存在だ。

宮なしじゃ、きっと私は今生きていけないんだ。


この気持ちってなんなのかな。

ただの睡眠薬としてじゃない。
友達としてでもない気がする。
なにか、
私の心に『宮の部分』がある。

睡眠薬でも友達でもないのなら、
私が宮に執着する理由は何?


考えるのも億劫で、私は静かに目を閉じた。


彼の残り香を探す。

心の『宮の部分』の隙間を埋めるみたいに、

君に焦がれて

ああ、


そうか。

私は…


私はその気付きを得ると、
なぜか無性に眠くなり、
そのまま深く深く闇の中に落ちていった。