不眠姫と腹黒王子




「…そうか。」

お父さんは涙を拭い、呟いた。


怒られるかな…
不眠症を黙っていたこと。
毎日男子のそばで眠っていたこと。

まぁ怒られてもしょうがないけど。


そう思っていたけれど、
お父さんの口からでたのは意外な言葉だった。

「円、ごめんな。」

「へ…?」

「お前が苦しんでるのに、気づいてやれなくて。」

「いや、それは私が隠してたから…」

「ごめん。
ごめんな。」


なんでそんなに謝るのか。

お父さんが頭を下げるたびに目頭が熱くなり、
私はぎゅっと口を結んで目をそらした。


「宮くん…って君だよね?」

お父さんは隣で静かに聞いていた宮に話しかけた。

「はい。」

宮はふてぶてしく返事をする。
珍しく猫を被っていない。

「ありがとう。」

「……。」

「娘が今生きているのは君のお陰かもしれない。」

「そんなこと…」

宮は否定しようとしたが、
私の頭の傷を見て言葉をつまらせた。


たしかにそうだね。

私、宮が協力してくれなかったら、
とっくの昔にぶっ倒れてた。


「結ちゃんも、いつもありがとう。」

「いいえ。友達ですから!」


お父さんはようやく弱々しい笑顔を浮かべた。