不眠姫と腹黒王子




久々に一人で歩くな…。

いつも結が心配して移動とか付いてきてくれたから。


ノロノロ歩く私を後ろから何人かの人が抜かしていく。

ヤバイ…
立ってただけなのに、体育ってやっぱきつい。

ちょっと気持ち悪くなってきた…。

立ち止まろうかな…


ふと前を見て、心臓が大きく跳ね上がった。

雑踏の中に宮を見つけたのだ。


逃げなきゃ…でも、今きびすを返したら意識してるってバレるかもしれない。

不眠症が治ってないって…バレるかも。


私は唾をゴクリと呑み込み、
大きく息を吸った。

胸を張って大きな歩幅で歩き出す。


バレない。

私は元気だ。

宮なんかいなくても、一人でも。

私は傷ついてなんかない…!


熱い。寒い。
目の前がどんどん歪んでいく。


すれ違う直前、ぼやける視界の中、
宮と目が合った。


「ぁ…」


『俺はお前なんか嫌いだよ。』


私は…

私は、本当は…


上からすっと黒が降りてきて、
私の視界を塗りつぶした。


その直後、激しい痛みを感じ、
私の意識は完全に途切れた。