「見た目は…別によくて…。」

「へぇ~、じゃあ性格とか?」

「性格も…普通でいい…。」

「じゃあなんかフェチとかないの?
よくあるじゃん。指フェチとか、筋肉フェチとか。」

「フェチ…」

円は少しの間悩むと、「あ」と声を出した。

「匂い!」


「っ!!」

「え、匂い!?」

知ってるくせに、徹はさも初めて聞いたかの
ように驚くふりをする。

「匂いフェチってなんかガチっぽいな…」
「エッロ~…」

小声で話す男子二人の声に
円も他の女子も気づかない。

「へぇ、匂いってどんな?」

「んー、柔軟剤…っあ…」

円は俺を見上げると、顔を真っ赤にして俯いた。

どうせ柔軟剤の匂いがする俺を好いてるって、
勘違いさせたとでも思ったんだろう。

そんなことで勘違いしねぇっつーの。


「じゃあさじゃあさ、俺は?ど?」

徹が円との距離を一歩近づけた。

「えっ、あ…う、うん…。フツー…?」

「えー!そんな遠くじゃわかんないでしょ?
もっと近づいていいからさ。」


「ちょっと平塚くん、やめなよ…」

佐竹さんが困った様子で徹を止める。

「なんでよ!ただの興味だって。
ね、円ちゃん。
それともさ、具体的に好きな匂いのやついるの?」

「えっ…」


円が固まり、その場に沈黙が流れた。